勤務先に私学を選ぶメリットとデメリット
私学で勤務するメリット
転勤がないこと
メリットは何といっても、転勤がないこと。転勤がないことで、3点嬉しいことがある。
思わぬ引越しがないため、人生のプランを立てやすい
まずは、引っ越ししなくて済むということ。車を買ったり、家を買ったりというような計画をたてやすい。公立でも転居がなくて済むようにという配慮はしてもらえると聞いたけれど、家を買った後に学校が変わった場合、通勤時間が長くなってしまう可能性がある。通勤時間って30分違うだけで、1日1時間のロスなので、それは割と痛い。
生徒のレベル
次に、教える生徒のレベルがずっと変わらないということ。違う学校に行くと、生徒の学力レベルが変わるので、教材を1から作り直さなくてはいけなくなる。同じ私学に勤め続けた場合、そういうことがないので、とても楽。
勝手知ったるところで過ごす楽さ、役に立てている実感
最後に、長く勤めると、何でも勝手知ったる状態になる。「○○の申請書ってどこだったか」とか「○○の手続きはどうするか」とか、はたまた「○○先生の趣味は何か」とか「息抜きにちょうど良い空き教室はどこか」とか、何でも知っている状態になる。
何かがわからなくて困っている生徒や、困っている他の先生の力になるころができるようになるということ。新しい学校では、何も知らない状態に逆戻りしちゃうからね・・・。
あとは、卒業生が会いに来てくれるのが、結構嬉しい。
給与の水準が公立よりも高い
それから、お給料の水準が高い。30歳で700万もらっていたから、大企業と比べても良い方だと思う。
私学で勤務するデメリット
休みの少なさ、激務
デメリットは、土曜に授業がある学校が多いこと、人の流れがないから仕事の偏りなどがひどくなる一方であるということ、それから、実績を求められるために激務になりがちだということ。非常勤講師や常勤講師の割合が高くて、学校を運営するにあたっての専任一人あたりの負担が大きくなりだちだということ。
小さなお子さんのいるお母さんには、仕事を割り振りにくい雰囲気。また、年輩の先生にも仕事を割り振りにくい。そうやって割り振れなかった分は男性か独身女性にまわされて、3,40代専任の男性と独身女性が2年間で9名辞めた。専任全員で70名と少しなので、2年間で1割が抜けたということ。
教育業界の危うさ
公立は賃金が安く、私立は激務。
教育業界、大丈夫か!?と思う。やりがいはあるけれど、やりがい搾取だと思うことも多いし、心身の健康を保つのが大変。
はたらきやすい私学の見分け方
はたらきやすい私学の見分け方
専任の先生に余裕があるかどうか
非常勤講師と専任教諭がペアを組んで同じコースの生徒を受け持つことが多いので、専任の先生と色々と相談することがある。
そのときに、専任の先生が必要最低限のことしか伝えてこないのか、それとも雑談をする余裕があるのか、そこを見ること。
当然、自分と組んでいる先生だけでなく、他の教科の先生の様子もよく観察しておくこと。
前任校では余裕がなく、必要最低限の伝達のみですまそうとする専任教諭が多かったが、今の学校はとてものんびりと雑談を楽しんで帰って行かれる。こんなにも違うのだなと驚いている。
サポート系の職種の人数
前任校では、学校のシステム管理を請け負うスタッフが1名だけだったが、今回の学校ではフルタイムの3名にパートタイマー1名。
また、今回の学校では管理職の人数が多い。校長、副校長、高校教頭、中学教頭、教員の潤滑油的な職2名。
前任校では、校長、教頭のみ。あとは最前線で指導をする担任、副担任。サポート体制なんてないから、困ったことがあったとき、相談する窓口がなかった。(各種手続き、パソコン操作など)
図書館の職員の人数も、今の学校はフルタイムが4名だけど、前任校では2名のパートタイマーのみ。図書委員の指導も、図書館の職員さんがしてくださっている様子。
教員の雑用を引き受ける職種の人数が、たいへん充実していて、それが専任の先生のあの余裕につながっているのではないかと思っている。
定年退職以外での退職者の人数
ここは要チェック。できれば数年分。ここだけで、色々とわかる。
ぜひ、古株の先生と仲良くなって、ここを聞くべし。
ここの数は全然違う。
遠方から通っている先生の割合
遠方から通えるということは、常識的な時間に業務が終了しているということ。ここも、前任校と今の学校では全然違った。前任校では、ほとんど近くに引っ越していた。
部活動に制限があるかどうか
前任校は、日曜・祝日の部活動に制限がかかっていなかったため、何ヶ月も休みのない人がたくさんいた。
休養が取れないのって、着実に心を蝕んでいく。
「研修日」が半日か全日か。
私学は土曜日も授業がある場合が多い。だから、週休1日になってしまう。
休みを増やすために、平日に「研修日」なるものを設定している学校が多い。この曜日は、人によってバラバラになっていて、順番に休めるというわけです。
この研修日が半日の学校もある。だから週休1.5日というわけだけれど、0.5日休みというのがうまく休めないことが多い。
午前中勤務で午後休みの場合、午前中に担任しているクラスの生徒が無断欠席していたりすると、連絡がつくまで帰りづらい。
午前中休みで午後が出勤の場合、遅刻してはいけないので、用事は入れにくい。
研修日は全日が良い!絶対に!
非常勤講師と私学共済
私学共済の加入条件
私学共済:医療保険と共済年金に加入させてくれる制度。
専任や常勤講師なら必ず加入できる。
非常勤講師だと、コマ数による。
今回は、非常勤と私学共済についてまとめる。
非常勤講師の加入条件
私学共済に加入させてもらえるコマ数は学校によって違うけれど、緩いところだと10コマ、厳しいところだと14コマ以上。私学共済のページを見ると「非常勤講師の先生は週に20時間以上を目安として・・・」と書いてあるけれど、授業準備や空きコマでの待機している時間なども考慮して、だいたい10~12コマで加入させてくれるようです。
非常勤講師で就職するときに気をつけておくべし
私は私学共済に入っておきたかったので、面接のときにその旨を伝えておきました。私学の採用って、中小企業だけにシステム化されておらず、「待っていたら係りの人が希望を聞いてくれるはず」なんて思っちゃいけないのです。
毎年数人だけの採用だから、採用する側も「共済に入りたいかどうかの意思確認をどの役職の人がするか」なんて決めていない。
というか、「来年、授業に穴をあけずに済むように採用しなくっちゃ」ということで頭がいっぱいで、「この新しい人の医療保険と年金保険はどうしてあげるのが良いの?」なんて考える余裕はない。
その学校での共済加入の下限のコマ数以上を受け持つことになれば、私学共済への加入は強制です。入りたくなくても入らないといけません。
ここはあとから融通の利く部分ではないので、自分からしっかりと確認しておくべし!
私学共済に加入できた方が良いの?
家族の扶養に入らないのなら、私学共済に加入できた方が良い!
なぜなら、健康保険の掛け金が国民健康保険より安くなる場合が多いし、年金も手厚いから。
医療保険は国民健康保険に加入し、年金は国民年金保険をきちんと払うこと。ただし、この場合もらえる年金は国民年金(基礎年金)のみ。
私学共済に加入した場合、年金の2階部分と呼ばれる厚生年金ももらえる。掛け金を自分でも支払う必要があるが、学校も同じだけ払ってくれるので、国民年金よりも断然手厚い。
非常勤ではたらいて私学共済に入るなら・・・
掛け持ちよりも、一つの学校でたくさんコマを持たせてもらった方がよい。各校で働いた分を合わせて何コマ以上で加入できる、というわけではなく、「うちの学校で○コマ以上はたらくなら加入させてあげる」という基準であるため。
掛け持ちをするにしても、半々で勤務するより、1つの学校で10~12コマ程度確保して私学共済に加入させてもらって、空いた日に掛け持ち校を入れるのが良い。
以上、私が勉強したこと。
非常勤講師の給料ー食べていける?コマ数・給与の決まり方ー
非常勤講師の給料について、まとめてみる。
非常勤講師で食べていけるか
結論から言うと、住む家があれば、無理ではない。
運と交渉によるけれど、無駄なくたくさん授業を入れてもらえたら、手取り20万くらいになるから。
でも、持ちコマが少なければ、当然給料は減る。後で書くが、持ちコマ数は自分の都合だけで決まるわけではない。
だから、賃貸マンションに住む前提で非常勤をしてはいけない。
勤務先を考えるときに、実家等から通える範囲内でないと、毎月赤字と言うことになりかねないから。
常勤か専任なら、マンションを借りても何とかやっていけるけれど。(常勤だと、年齢を考慮する学校もあれば、年齢に関わらず同じ場合もある。だいたい月収30万円くらい。)
給与の中身
私学の場合は、週1コマで13000くらいが相場。週に10コマ持っていたら、月に13万円程度もらえるということ。
1コマは45~55分。
待遇の良いところだと、ボーナスが出たりする。と言っても、1年で1~2ヶ月分くらい。
補習などを引き受けたら、余分にきちんと払ってくれるところが多い。ただし、試験の採点などは余分に賃金が出ないのが多い。
今いる学校では、夏休みなどの長期休みのときにも支給されるのがありがたい。わが地元の公立だと、約3000円×実際に授業をした回数という計算の仕方なので、長期休み中はお給料なしだから。
持てるコマ数の限界
専任(正社員)の教諭で、だいたい15~17コマくらい持つ。
専任は他にも仕事がたくさんあるので、それくらいが限界。
でも、非常勤は授業だけなので、20コマくらいは普通に持てる。
初任で20コマは準備大変だと思うけど、慣れちゃえば、そんなに準備時間必要なくこなすことができるようになるからね。
コマ数はどうやって決まるか
勤務先との交渉による。パターンとしては以下。
①募集の段階で「週○コマ程度」と明記されている場合
②募集の段階ではコマ数が決まっておらず、採用されてからも「来年度から勤務」ということだけが決まっていてコマ数は直前の3月くらいに決まる場合
③勤務していた学校で、次年度も更新になる場合
コマ数が決まるのは、ぎりぎり。
3月に次年度の入学者数が決定して、それからクラス数が決まり、必要なコマ数も決まるからです。だから、3月に最終決定。
①のようにだいたいのコマ数を約束の上内定をもらっていても、コマ数が変わる可能性があるのがこわいところ。
非常勤の給料は、コマ数にほぼ完全に比例するので、1年間の給料が決まるのが、3月ということ。
だいたいの私学で、専任・常勤教師の持ちきれないコマの分を非常勤でまかなっている。だから、クラス数によって非常勤の持ちコマ数があおりを受ける。
だって、専任・常勤の給料は決まっている。それなら、できるだけたくさん専任・常勤に授業を持たせて、非常勤のコマ数を減らした方が、学校の支出は減るからね。
長くなったので、以下の内容については別記事にします。
☆コマ数を交渉するときに気をつけておきたいこと:私学共済
☆学校の掛け持ち、塾との掛け持ちについて
私学教員の結婚について
私学教員の結婚と、その後の働き方について
結婚できるか
男性の場合
専任の男性教員はほぼ100%結婚していた。だって、需要があるから。
収入はとても良く、転勤はなく、教員なので真面目な人が多い。婚活市場ではモッテモテでしょうね。私だってねえ、そんな相手を求めていますよ!ι(`ロ´)ノムキー
とにかく男性教員はモテモテでした。専任になりさえすれば。
今のご時世で結婚してる人がほぼ100%って、すごいと思う。就職難易度はそんなに高くないのに、とてもオトクだと思う。(結婚したい男性にとってはね)
女性の場合
それに対して、女性教員というと、寂しい状況。専任になった人のうち、結婚する割合は半分くらい。
それに、結婚したら、もしくは子供が生まれたら辞めてしまう人が多かった。日曜も休めないからね。なので、学校に残っているのはほぼ独身のみ。
結婚・出産後の女性の勤務
出産後も残って働いてらっしゃった女性の先輩は私の希望の星だったけれど、話を聞けば、ご実家に育児を託している状態だった。もしくは、気持ちの強い人(私は育児中だから無理です、とはっきり断ることのできる人)。
時短について
一応時短勤務の制度はあったけれど、担任を持てば、制度は無いも同然。
だって担任クラスの生徒が問題を起こしたのに、「時短なんで~」と帰るのは、難しい。終業時間は、定時だと17時で、時短だと16時頃。だから1時間分くらいのお給料がカットされている。でも、時短以外の教員が定時で帰れるわけもなく、だいたい20時くらいまでは仕事をしている。その中で、お給料は1時間分カットされているだけなのに、皆より4時間早く帰るのって、やりにくい。
時短の人が出ると、時短の人の4時間分の負担が、周りにかかるということ。余裕のある職場ではないから、周りの立場としても、時短が出ると辛い。
部活も運動部から外れる等の考慮をされていたけれど、外れた分は独身の教員にまわってくる。独身だって、日曜は休みたいのにね。
そういう環境だから、小さなお子さんがいると肩身がせまく、結婚したら辞めてしまう人が多かった。
✄- - - - - - キ リ ト リ - - - - - ✄
それで私も、結婚したら専任は辞めようと決めていた。まあ、結婚もなくなったんだけれどネッ( 'ㅂ')
私立高校の労働環境と年収について
私立高校の労働環境・給料
働いていた学校の学力と待遇について
「みんなの高校情報」の偏差値で60~70あたりのところで働いていた。
生徒はとても素直でかわいらしく、その点では恵まれていた。また、給料も高かった。40なかばで1000万、定年のあたりでは1200万くらいという噂だった。
労働時間は月300時間オーバー
労働環境は、私には辛かった。他の仕事を知らないから比較はできないけれど。
役職に就いていたときは特に毎日、死にたいと思っていた。疲れすぎて、何も考えられなかった。給料減らしてくれていいから、仕事も減らしてほしいと思っていた。
役職についていなかったときは、こんな感じ。月~土は授業。授業のあとに部活や分掌や担任業務をして、だいたい20時になる。それから気力が残っていれば予習。日曜日は部活の練習試合や公式戦が入って、夕方まで拘束。だから、平日と土曜は平均すると8時半~20時半頃まで仕事で、日曜は月に2回くらいお休み。週に1回13時半頃に帰れる日があって、その休みは死守。だから月の労働時間は、月-土の12時間×31日×6/7+日曜の8時間×2日ー7時間×31日÷7日=304時間程度。
役職についていたときは、平日の退勤時間が22時頃だったので、304+1.5時間×31日×6/7=344時間程度。
週の労働時間40時間だとしたら、月の法定労働時間は40×31÷7=177時間。役職に就いていないときでも127時間オーバーだし、役職についていたときは167時間オーバー。
残業代は一切出ない。(お給料自体が高かったので、残業代くれという気持ちはあまり沸かなかったけれど)
生徒と関わることが好きだったはずなのに、生徒が質問に来たときに「ああ、また帰りが遅くなる・・・」と、また生徒が雑談をしてきたときに「つまらない話。それがどうした。」と思うようになった。
今までの自分では考えられないくらい、生徒に無関心になっていたし、自分の仕事を増やす人のことが憎くてたまらなかった。
精神崩壊しそうだった
元気なときは、マンションに帰ったら叫んだりしてた。「もういやーーー!」と。
元気じゃないときは、自分が泥のようなものになったように力が入らず、「気付いたら死んでたらいいのに」と考え、でも積極的に死ぬための行動を起こす元気もわかず、「はあ、疲れた・・・」とつぶやく。
高3生が大学の合格を報告に来てくれるとき、教師としてものすごく嬉しいときのはずなのに、「合格したのはわかったから、もう帰って~・・・。あなたがここにいる時間分、帰るの遅くなる・・・。」なんて思ってしまったり。
でも生徒は、無邪気に話し続けるのね。自分がどんな苦労をして、どう工夫したかとか、どういうときに辛かったかとか、ご家族がどんな様子だったかとか。
そういう話を聞くのも仕事のうちと自分に言い聞かせて、ニコニコと話を聞くようにしたけれど、一人来る度に1時間はかかる。来なくていいのに・・・と思ってしまったことがある。
そして、そう思った自分にうんざりする。うんざりしつつも、仕方ないよなと思ったりする。
退職してみて気づいた、時間がある幸せ
退職してしばらく経ったある日、壁の照明のスイッチが汚れていることに気付いて、メラミンスポンジでこすったのね。そうしたら、汚れがみるみる取れていって、見違えるようにきれいになった。
それを見てとても嬉しかったのと同時に、涙が出た。生きるためにご飯を食べたり、不潔にならないように着替えたりお風呂に入ったりはしていたけど、気持ちよく過ごすために部屋に手を加えたのって、何年ぶりだろうかと思って。その必要最低限じゃないことをするのが、こんなにも幸せで、生きている実感に満ちたものだなんて。
私の退職は、長い目で見ると失敗だったんだろうけど、照明スイッチを磨いているとき、久しぶりに自分の体に血がめぐっていくような感覚になった。ああ、生きてる・・・と。
もう一度あの戦場に戻ることができるのか、そして戻ったとき、心身共に健全でいられるか、今必死に考えているところ。